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大河ドラマ「平清盛」最低視聴率。でも見応えがあった。 [文化・歴史・芸術]

  NHK大河ドラマ平清盛が歴代最低視聴率で終わったようだ。歴史好きな私は毎週楽しみに観ていたが、たしかにとっつきにくい内容であった。特に登場人物が親しみにくい平安貴族や皇族ばかりで、その人間関係も複雑でわかりにくい。さらにゆったりした生活描写なども現代とギャップがあり過ぎて違和感を感じてしまう。またこの時代は戦国や江戸、幕末と違って馴染みが薄く、さらに平清盛も権力亡者のイメージが強くて歴史上の人物の中でも人気が低い。そうしたことも視聴率が伸び悩んだ原因ではないだろうか。

  しかしながら、松山ケンイチ演じる清盛は見応えがあり、彼の役者としての才能や魅力がキラリと光っていた。また若手、ベテランの味のある演技もあり、作品としてはなかなかの出来栄えだ。視聴率に関係なく、やはり大河ドラマである。

  ところで、この物語は平清盛を中心とした平家の栄枯盛衰が描いたものであるが、現代日本社会の状況と幾分重なる面も多い。そうなるとあまり良い話ではないが、歴史をそうして観察するのも面白い。

   現代日本を終戦後からスタートとすると、焼野原の無一文から、ひたすら国の再興を目標にひたすら働き、やがて高度経済成長を経て、30年後には戦勝国アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国にのし上がった。事実上、世界のトップである。ここまでは順風万帆に進んでいたが、90年代のバブル経済を頂点して歯車が狂い始めた。それから20年、経済成長が止まり、デフレ不況、格差拡大、借金の積み重ねで国家財政危機が懸念されるなど、平家一門が辿った「衰」の道とどことなく似ている。

  その中で気がかりなのが、「驕れる(おごれ)人も久しからず」。武士であることをすっかり忘れ、公家になりきった平家はその時すでに衰退が始まっていた。日本も金持ち国家になった途端に昔の困窮していた時代を忘れ、世界の中でも「驕れる人」となった。数十年に及ぶ経済的な豊かさが、国民の生活水準や意識をすっかり変えてしまい、経済が下降線になっても、豊かな水準から脱却できず、それが少し落ちただけでも不幸を嘆く、いわゆる平家物語の貴族社会になってしまった。

  もうひとつの驕りは、自分たちが世界でもトップレベル先進国でアジアでは最も優秀な人種だと信じ込み、新興国の人達を常に見下していることだ。また日本には高い技術力があり、彼らは到底追いつけるはずがないという驕りや油断も根っから浸みついている。それが紙一重の差に縮まり、もはや能力的な貯金も底をついたことに気づかなければいけない。

  これまで最強の国際競争力を誇ってきたソニーやパナソニック等の製造メーカーも、最近では台湾や韓国などの新興国企業に負けが続いていおり、貿易収支にも赤信号がともっている。円高の問題だけではない。いまの日本人の気質は輝きがあった時代とは明らかに違う。そこに本質的な問題が潜んでいるのだ。

  若者たちの就活では安定した企業ばかり狙い、苦しい仕事は極力避けている。また、将来に対する夢を語る者も少ないという。また年配者は自分の生活の不満ばかり口にして、将来の人たちの事はあまり考えていない。毎年3万人の自殺者を出す社会は異常そのものだ。みんなが嫌な事を避け、楽で安全で安定したところを望む。それだけでは弱肉強食の世界で通用するはずがない。

   いま大事なことは、本当の日本の実力を知ることではないだろうか。資源もなく、軍事力もない。食料も十分自給自足できなければ、エネルギーの100%を外国から買わなければならない。結局、あるのは人の力だけである。その力を十分発揮できなければ、食べていけない国であることを自覚することだ。

  「癒し」や「絆」などゆるい言葉ばかりがもてはやされる昨今であるが、生きていくこと、食べることがどんなに大変で努力しなければならないか、恵まれた世の中で育ったいまの若者たちにそれを教えなければならない。平清盛の子供たちが弓矢等の武術を習っている時、雅(みやび)な世界にいる自分が、なぜこんなことをやらなければならないのかと理解に苦しんでいたが、まさにそれと同じ状況である。

   いま政治はまた財政出動や金融緩和など、甘やかしの政策を実施しようとしている。まだ体力のあるうちに厳しい道を選ぶべきと思うが、平家が雅(みやび)の世界から抜けられなかったのと同様にいまの国民は豊かさを手放したくないのだ。どこかで方向転換しなければ、本当に平家物語になってしまうようでならない。考え過ぎかもしれないが、このドラマからそんなことを連想するのだった。


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