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TPPは日本にとって、吉か凶か。 [外交・防衛・海外]

  10月半ば、暑さも和らぎ、紅葉が彩る季節がやってきた。振り返れば今年の夏も、酷暑、ゲリラ豪雨、台風が日本列島を襲い、多大な被害をもたらした。まだ、各地で地震が頻発し、予断を許さない状況が続く。本当に心落ち着いて紅葉を楽しむことはなかなかできなさそうだ。

  政治の世界も、同じように落ち着かない。欧州の政府債務(借金)危機、米国の財政赤字、新興国のバブル崩壊の予兆など、数え切れないほどの危機、リスクが迫っている。そうした中、TPP(環太平洋経済連携協定)へ交渉参加を巡って熱い議論が熱を帯び始めた。

  工業製品を輸出する経済界の危機感は強い。日本の主要産業のライバルである韓国は、欧州、米国とのFTA(自由貿易協定)を結び、自動車や薄型テレビ等にかかっていた高い関税が順次撤廃されていく。日本は国際競争の中で勝ち残れるか。日本の高性能・高品質神話も、かつてほどの威光は薄らいでおり、コスト競争で勝敗が決まる可能性が高い。明らかに日本は苦しい。

  一方、農業と医療・製薬業界はTPP参加に強いアレルギーを示している。これまで強い規制のもとで保護されてきた産業である。安い輸入の農産物や医薬品が雪崩込れこめば、はたして生き伸びることができるか不透明だ。農業に関しては、広大な土地を持つアメリカやオーストラリアなどと比べると途轍もないハンディーであり、不公平さが漂う。消費者の懐にとって良くても、日本の安全保障に関わる食の産業が壊滅しては、自立国家としての存続が危うくなる。どこの国でも、必ず様々な内情を保有する。何でも一律な条件で貿易するのは、理想であっても、現実的には難しい話だ。アメリカですら、時には保護貿易の姿勢を示すことさえある。

   90年代、日本の金融業界が閉鎖的であった時も、欧米のグローバル経済に乗り遅れてはいけないと、一部の経済界や気鋭の経済学者、そしてマスコミが散々煽りたて、また、アメリカからの激しい外圧もあり、当時の政府は、そのままグローバルスタンダードを取り入れるに至ったことは記憶に新しい。その結果、すごい勢いで、銀行や大企業の合併が相次ぎ、外資系の金融機関や投資家も続々参入して、日本の証券市場や不動産市場、株主として会社経営までいじくり回した。その結果、弱肉強食の競争が繰り広げられ、日本の雇用制度は崩壊し、いつの間に格差社会と負債の山が築かれた。世界の波に乗ることは、そうしたリスクも伴っているように思える。

  アメリカのもうひとつの顔は世界最大の農業国でもある。日本の食市場を虎視眈々と戦略的に狙っているのは間違いない。その手段としてのTPPならば考えものだ。

   この問題は単に経済だけではなく、外交、防衛が絡んでくるため、急いで結論を出すことは無い。財界や業界団体だけでなく、日本の将来のビジョンの中、本当にメリットがあるかどうか、国民的な議論を交えて、結論を出してもらいたい。


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