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Eテレ「ティナ・シーリグ氏のスタンフォード白熱教室」はアグレッシブだ。 [教育・科学・技術]

 スタンフォード大学企業家養成講座ティナ・シーリグ先生の授業がとても刺激的だ。

 スタンフォード大と言えば、世界最高峰の学府である。超秀才たちが大学でどんな勉強をしているのか興味深々で番組を観た。授業の内容が、日本では考えられないほど、自由で創造性に満ちている。とにかく答えは一つでなく、様々な視点から、最も良いアイディアを引き出す工夫が凝らされている。これを観ていると勉強しているのは学生だけでなく、先生も一緒になって、新しいことを学んでいる。

 番組の第7回目講義では、いまをときめく企業の第一線で活躍する4人のゲストを招き、企業の創造性の秘密を、クイズ形式で探るといった内容であった。「創造性」という答えが有って無いような事象をどう捉えるか、学生が絞り込んだいくつかの質問から、ゲストと学生の知恵比べが始まる。

 授業の進め方はこうだ。生徒を2つのチームに分けて、先生が創造性についてゲストに質問をする。たとえば「採用面接で創造性をどう見抜くか」「創造性高めるチームのつくり方」「アイディアを実行するとき決定権は誰にあるか」など、それらの質問をゲストが自分の会社や体験を例にとって答えていく。ただし、本当のことでなく、ウソを話してもいい。それを学生たちが本当かウソかを当てる。学生たちは騙されまいと必死だ。ゲストも頭の良い学生相手だから、下手な話をすれば直ぐバレる。お互い創造性を高め合いながら真剣勝負をしていく。最後に学生たちが考えた答えに対して、ゲストはウソでも本当でもその理由をわかりやすくジョークなどを交えながら話す。その中で学生たちは自分の考えとの違いを理解し、その多様な考え方を深く学んでいく。

 この授業で面白いのはチームで考えることにもある。そこには組織で物事を考えて進めていくヒントが隠されているようだ。当然、チームの中には色々な意見があり、たったYES,NOの2つの答えでも大きく分かれる。その時の学生たちの臨機応変さも感心させられる。時には多数決を採ったり、場合によっては、ある1人がみんなを惹きつける意見を出してまとめ上げてこともある。ここにもビジネスの中でスピーディーに物事を決定させ、進めていくノウハウが盛り込まれているようだ。

 それに比べて、日本の大学はどうだろうか。私の時代と変わらなければ、まず、学生たちを大教室にすし詰めにし、先生が専門書を読みあげながら一方的に授業を進める。実に退屈で、答えはおおよそ1つ、その中には創造性のかけらもない。また、学生たちもチームで考えることは無く、試験で授業で教えられた内容を、それぞれの学生がどれだけ理解し、暗記しているかが試されるだけである。結局、日本の学生は大学で個人プレーでやる方法しか学んでいないのではないだろうか。

 日本の詰め込み教育に対して、アメリカは実践教育が主体と言われている。ただ、その実践的授業に臨むには、高い専門知識や基礎学力も当然必要になる。おそらく、スタンフォードの学生はしっかり目的を持ち、そうした知識を日本の学生以上に勉強しているように思える。もちろん、世界トップクラスの学生であるから、当たり前のことかもしれないが。

 一方、日本の教育は、小中学校までの基礎教育まで良いが、それ以降はあきらかに問題だ。大学の教育方法が義務教育と変わらないようでは、それに対する学生の意識も同様であろう。せめて東大をはじめとする難関大学ではスタンフォード大のようにアグレッシブであってほしい。

 こうして考えると、最近、日本の企業が世界の中で埋没していく原因は、やはり「学校教育の質」が大きい。同じ仕事でも、クリエイティブに楽しく、そしてスピーディーに取組むのと、自分の役割だけ、黙々とこなしていくのでは、仕事のレベルや精度だけでなく、情熱や勢いにも大きな差が生じるだろう。「偏差値教育」と「安全志向」に偏った日本式教育、そろそろ脱却しなければ、本当に世界の中で置いてけぼりになってしまう。

 この白熱教室は日本の古い教育体質を根底から考えさせられる番組であった。


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