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「坂の上の雲」からのメッセージを考える。 [文化・歴史・芸術]

 「坂の上の雲」を観ると、元気が湧いてくる。いよいよ12月5日から第二部が始まる。

NHKスペシャルドラマ・ガイド 坂の上の雲 第2部 (教養・文化シリーズ)

NHKスペシャルドラマ・ガイド 坂の上の雲 第2部 (教養・文化シリーズ)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/10/25
  • メディア: ムック

 明治維新初期は、文明開化に沸いて、皆が希望に満ち、活気が溢れる時代のイメージが漂う。しかし、実際は想像がつかないくらい国家も庶民も貧乏で、交通などの社会基盤ですら殆ど整っておらず、それに加え欧米、ロシアなど強国からは常に脅威にさらされていた。まさにヨチヨチ歩きで苦難に満ちた時代であった。

 主人公となる秋山好古、真之、そして正岡子規、彼らは同じ旧松山藩で生まれ、激動する社会の中で成長していく。やがて好古、真之は軍人として国を背負い、のちの日露戦争で奇跡の勝利を導く活躍をする。一方、子規は俳句という古典を近代文学に蘇らせ、日本近代文学のすそ野を広げる遺業を成し遂げた。いずれも、この時代に大きな功績を残す人物達である。このドラマは、そんな波乱万丈に満ちた彼らの人生に、ひたむきに、そして力強く生きていく姿を描いている。

 この時代の特徴として、早く欧米強国と肩を並べた国家にしたいという思いが人々の意識の中にあり、また個人も自立に対する執着心が強かったように思える。それゆえ、好古、真之の「凄み」「潔さ」「清々しさ」、子規の旺盛な好奇心、バイタリティーは際立って映る。

 いずれも自立自尊の精神がこの時代を貫いている。主人公の彼らは歴史に名を残した特別な存在だが、この精神、気質は、一般庶民にも共通してあったように思える。だから、明治時代のイメージはどことなく明るく、力強さを感じさせるのではないだろうか。

 それに比べて現代はというと、実に軟弱である。人々を取り巻く環境が整い過ぎるくらい平和で良い社会である。でも、多くの人たちが心に「鬱」を持ち、物事をすぐに投げ出してしまう傾向がある。国家も人民もみな煮えきれない。辛抱や忍耐とか、子どもの頃から訓練されずに育っているから、大人になって耐えることを要求されても、心が先に折れてしまうのも無理はない。そして、国家、政治もそれと類似しているから、実に情けない。

 日本の凋落はすでに始まっており、世界第2位の経済大国はもう過去の栄光である。このままでは新興国にも抜かれ本当に中流の国家になってしまいうのではと不安を覚える。このドラマでは、国家の力の源泉は人であることを示している。その国の人がどれだけ元気で活気があるか。また、苦難を乗り切る気迫があるか。それが力となり富となる。自立自尊はそれがなければ達成できないことも感じられる。

 しかし、坂の上の雲をみると、日本人には苦境を乗り切る忍耐力、教養、そして楽観性を潜在的に持っていることがうかがえる。自分もこのドラマをみると元気になる理由は、たぶん、そうした潜在的観念が呼び覚まされているからではないかと思うのだ。

 原作者の司馬遼太郎さんは歴史小説を通して、日本人の本質を追求してきた人だ。この「坂の上の雲」の小説は、おそらく、日本人が持っていたすばらしい精神性、魂を、後世の人達に伝えたかったのではないだろうか。そうであるならば、真剣に司馬さんのメッセージを受けとらなければならない。


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