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国宝、「松林図屏風」を観れてよかった。 [文化・歴史・芸術]

 上野の国立美術館(平成館)で開催されている長谷川等伯展を見に行った。
長谷川等伯と言えば、桃山時代を代表する絵師で、金碧障壁画の「楓図壁貼付」や水墨画の「松林図屏風」は特に有名で国宝の中でも最高級の美術品と言われている。

 長谷川等伯という人は、今回の展示会までよく知らなかったが、結構苦労人のようである。
名門の出でもなく、能登の七尾で仏教絵画を描いていた田舎絵師で、若い時に上京し、筆一本で絵師の最高峰まで登りつめた人物であるが、決して順風満帆な人生ではなかったと言う。
当時は、室町時代から大名や寺院の大仕事は名門狩野派に独占され、彼が入り込む余地など殆ど皆無であったが、苦労を重ねた末、次第に力が認められ、最後は狩野永徳を凌ぐほどになった。現代では才能があれば若くして名声を得ることができるが、この時代はひたすら忍耐の積み重ねがなければ飛躍の芽もあり得なかっただろう。

 今回の展示会では仏画や人物からはじまり、山水図や花鳥図など自然を題材としたもの、桃山時代の華やかな金屏風、そして水墨画のふすま、屏風図など、実に多くの作品が展示されていた。とくに人物画はどれも品格、精神性を感じる。おそらく仏画を丁寧に描いていたことで、人物画にもその魂と精神が宿ったのかもしれない。また、山水画は大胆に岩や川が描かれ、木や花も必ずしも忠実的な描写だけでなく、大胆な図案にも驚かされる。まさに日本のデザインの原点がここにあるのではと思うほどである。

 展示の最後は国宝松林図屏風である。さすがにここは大混雑であった。この絵は何度かテレビや本で見たことがあるが、やはり本物でなくては、その凄さがわからない。絵の題材はただの松林であるが、墨の濃淡だけで、静寂な精神的な空間が創り出されている。いつまで観ても見飽きない、不思議な絵である。現在、絵画の技法や道具は等伯の時代とは比較できないほど進歩しているが、没後400年経ち、この水墨画を超えられたものはあるだろうか。

 絵には人の心がよく映し出されると言う。等伯の絵にはそれを感じさせてくれるものがあり、どちらかと言えば心を洗わされる感じのものが多い。それはおそらく仏画を描き、信仰心の厚い人物であったからだと思う。
結局、1時間半かけて鑑賞したが、実に内容の濃い展示会であったと思う。美術鑑賞で頭はすこぶるリフレッシュされたが、でも、体力的には非常に疲れた1日であった。

松林図屏風

松林図屏風

  • 作者: 萩 耿介
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/11/29
  • メディア: 単行本


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