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村上春樹インタビュー集を読んで [文化・歴史・芸術]

 こんなタイトルでブログを書いているけど、実はまだ村上春樹の小説を一度も読んだことはない。ただ、ノルウェーの森のころから出版されるたびに世間が大騒ぎになるので、ずっと気になっていた。私自身、本を読むのは好きな方だが、小説よりもビジネス書や歴史などの実体験や史実を好む傾向があり、どちらかというとノンフィクションは苦手であった。今回、たまたま入った本屋に、「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集1997~2009」が山積みにされていたので、手に取ってパラパラめくり、斜め読みをしてみた。すると結構、心に響く言葉や文面など、思った以上に惹きつけられ、まずは村上春樹の入門編ということで、この1冊を買ってみることにした。

 さて、この本は12年間の国内外からのいろいろなインタビューのやりとりが村上春樹流にまとめられているもので、彼の小説を知るうえでも非常に参考になる。そこには読者や批評家の一方的な視点と違い、作家からの思いや作法のテクニック、あるいは本音の一部など記載されており、小説に対する私の偏見も少し一変させられた。

 まず面白いと思ったのは、物語の展開が自分でどうなるかわからない。楽しみながら書いているということだ。逆に書き上げた後の作業が大変で、何度も読み返し、納得のいくまで修正を繰り返し、文章の完成度を上げているという。また、短編小説などは最初にキーワードから、イメージを膨らませ物語にしていくらしい。彼独特と言われる作風はこうして生まれるようだ。

 しかしなぜ、村上春樹がそんなに売れているのか。しかも全世界から注目されている。
ひとつは現代社会の価値観、特に若い層の人たちが求めているものと、彼が描く世界に、ある種の共感するテーマがあるのだろう。彼の小説を読んでいる訳でもないので、知った被ったことは言えないが、たぶん、読んでいて感じる心地よさ、また次にどんな話があるのかとグイグイ引っ張られる感触、それに引き込まれていくものと思う。つまり、作者と読者の周波数がフィットし、小説の中で一緒に楽しんでいるのではないかと想像する。 
 また、このインタビュー集でも感じるが、文章、言葉がわかりやすく、丁寧だ。しかしながら、読んでいるうちに奥深さが残る。ここは文章的なテクニックを駆使しているらしい。作者の一方的な思いで読者を誘導せず、自由に考えを尊重させる。そんな作風も功を奏しているのではないか。まあ、難しいことはわからないが、1冊読むと次も読みたくなるというのだから得るものがあるのだろう。
 

 そのほか彼の日常であるが、規則正しい毎日の生活も意外であった。一般的な作家のイメージといえば、不規則で、一日中机に向かい運動不足、タバコをスパスパで、非常に不健康な生活、こんな生活スタイルを想像する。しかし、これの真逆で、毎日4時起床、8時30分睡眠。そして約10kmのジョキングないし1500mの水泳を欠かさず続けているという。本人は小説を書くにはものすごいエネルギーが必要で、体力がなければできる仕事ではないと語っている。こうした精神的な健康さが、作品にも良い影響をもたらしているのだろう。

 それから、彼自身、インタビューは好きでなく、テレビやラジオなどのメディア出演はないと言っている。確かに本人の話している姿は観たことがない。 偉ぶるところもなく、謙虚でまじめな感じが漂う、そんなインタビュー集であった。まず、代表作ノルウェーの森を読んでみよう。


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