SSブログ

いじめ問題、大人たちの社会のひずみが影響。 [社会・生活]

 大津のいじめ自殺事件は、これまでになく大きな社会問題として取り上げられ、ネット上でも異常といえるヒートアップが繰り広げられた。 

 「死に追い詰められるほどのいじめ」の実態が、同級生たちからの証言により、ようやく明らかにされ、被害者の壮絶な恐怖や苦しみが浮かび上がってきた。ご家族の深い悲しみと無念さを思うと、とても心が痛む。それ対して、学校や教育委員会、そして警察の責任逃れの弁明は決して許されるものではない。最後の砦となるべきこれらの機関の責任は極めて重い。

 だが、いくら学校や警察が迅速に、そして真摯に対応しても、このいじめ問題が本質的に解決されるわけではない。日本の社会構造のもっと根深いところに問題が潜んでいる。まず、今回の事件で注目すべき点は、その凄まじいイジメ行為が、不良少年でなく、ごく一般の普通の家庭で育った、いわゆる良い子たちが起こしていることだ。一部の報道では親や親類の職業が明かされているが、それが本当ならば厳しそうな家庭環境に育っている。

 では、どうして、このような「むごい心」が芽生えたのだろうか。おそらく、本人たちには加害者意識が殆どなく、むしろ、ダメな人間を正しているくらいの意識でやっていた可能性もある。 いじめられた方は生涯忘れられない心の傷を負うが、いじめる方は単なる悪ふざけの軽い気持ちの場合が多い。少しでも人の心や傷みが解れば、ここまでの悲劇には至らなかっただろう。だが、そこが問題なのだ。

 いじめの原因は、個人の性格や考え方、家庭環境、またその時の周辺環境など、非常に複雑な要因が絡み合い、単純に特定できない。しかし、よく考えてみると、今日のわれわれの社会が抱えている負の要因が、子供たちの社会に大きく影響しているように思える。次に思いつくところを記す。

①勝ち組と負け組社会の影響

 利益や効率を優先する欧米型の競争主義は、日本の経済や社会構造を変えるだけでなく、人の価値観さえ変えてしまった。特に競争で脱落した負け組と称される人たちは落伍者として、社会的ランクも下げられ、その多くは経済的にも苦しい状況を強いられている。つまり、競争社会に順応できない人間は、結果的に社会的な差別を受けているといっていい。そんな歪んだ大人社会を、子供たちはこれがいまの世の中の標準と捉え、自分たちも同じように振舞っているのではないか。いじめる側といじめられる側は、やはり「勝ち組」と「負け組」で分けられるように思える。

② IT社会がもたらした仮想社会の影響

 デジタル社会の進行により、コンピュータ上で物事を判断する社会になってきた。特に子供たちはゲームに夢中になり、現実とは違う仮想空間の中で楽しんでいる。だから体を使って遊ぶこともなく、もっぱら頭の中だけで、人との関わりも少ない。また、痛みや苦しみもすべて仮想の世界であり、ゲームの中では何回相手を痛めつけても、リセットを押せばまた蘇る。こうした状況の中で、果たして人や生き物に対していたわる気持ちや痛みを感じる感性が育まれるだろうか。それは絶対にありえない。だが、そういう社会にしてしまったのだ。

③ 協調が薄れる社会(個人主義)の影響

  世の中全体が個人主義社会に移り変わってきている。昔は日本の国も貧しく、みんなで力を合わせて生きていかなければならず、そうした中で、お年寄りから子供たちまですべてが、家族や社会にどう役に立てるかを考えて生きていくことが必然とされていた。しかしいまはどうだろうか。自分が社会の中でどう生きていけば良いのか、あるいはどうすれば得なのか、そんな事が生きる中心になっている。いわば個人ひとりひとりが、社会という列車に乗るのが精一杯の世の中になっているのだ。その思想は子供たちにも受け継がれている。

  結論として、やはり大人がしっかりしなければいけないのだ。世の中は弱者も強者も、様々な人たちが力を合わせて生きていかなければならないのだと、その見本を示していくことが大切である。現代の法律では個人の権利や主張ばかりが守られ、協調という思想が薄れている。これを補うべく、倫理や宗教の力も必要なのだろう。日本の言い伝えの中には、先人たちが苦労して悟った知恵がいっぱい詰まっている。もういちど、現代の日本の中に甦らせられないものだろうか。そのためには、法律のルールよりも、法の精神を周知させるしくみや、教育の中で、子供たちに効果的に理解させること。そして、大人たちが規範となるように、社会制度を変えていかなければならない。

  それから、子供たちを仮想世界から解放させなければならない。政府はゲームやアニメの振興を経済成長にかがげているが、これはたばこと一緒で健康害があるという認識のもとで進めていく必要がある。昔、「マンガばかり観てないで、はやく寝なさい!」と子供を叱っていたが、それは本当に正解だったのかもしれない。いまは悪性のゲーム中毒が蔓延し、多くの子供たちがそれに侵されているのだ。

  いま、政治は消費税、年金、経済対策だけでガタガタやっているが、日本人の精神改革も合わせてやらなければ本当の豊かな社会づくりにならないのではないだろうか。近代文明が否定してきた先人の知恵(古臭い常識)をもう一度再考するときが来たといえよう。


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント