SSブログ

全米経済格差の抗議デモ。中東民主化運動、欧州経済危機どころではない。 [外交・防衛・海外]

  全米各地でニューヨークのウォール街に対する怒りのデモが勃発している。その抗議デモは首都ワシントンにも飛び火して、とうとう政治的な次元まで発展してきている。この先、どこまで展開していくのか。

  アメリカは紛れもなく世界最大の経済大国である。億万長者の殆どアメリカ人であり、我々日本人からすると、大半のアメリカ人は、大きな家に住み、何台もの自動車を所有し、衣食には不自由することのない裕福な生活をしているという固定概念がある。しかし、デモに参加している若者たちの言葉はそれとはほど遠いものだった。とにかく経済的な苦しさを訴えている。

  いま、アメリカでの経済格差の問題は、日本以上に大きな社会問題になっている。地域によっては、町に仕事という仕事がなく、高校を卒業した若者は進学や就職もできず、軍隊に入隊するしか選択肢がないほど、絶望的な環境になっている。なぜ、豊かな国アメリカでこうした問題が起きたのか、そこにはやはり金融経済の光と影があるようだ。

  ウォール街は世界経済の中心であり、かつ世界最大のマーケットがある。そこに集まった膨大なマネーは投資という姿に変え、シティーバンク、バンカメ、ゴールドマンサックス等の銀行や投資会社、それに有数の巨大企業の間でグルグル回ることで、アメリカ経済を発展させ、かつ支え続けた。しかし、地方の中小企業や個人企業には、その経済は蚊帳の外、お金は常に素通り状態で、その恩恵を受けることはなかった。

  人の体で例えれば、全体を占める割合が一番多いはずの毛細血管にわずかな血液しか循環せず、殆どが大動脈と大静脈しか流れないという歪(いびつ)な状態が起きているのだ。血液の流れない毛細血管、いわゆる地方の弱小企業などは倒産や廃業に迫られ、その一方で、カネ回りの良いウォール街では桁違いの高給を手にする者も大勢いたという。その超経済格差への怒り、そして、ウォール街の欲望が引き起こした様々なローン破たん等、庶民の生活を大苦境に陥れた怒り、それらの怒りが爆発するのは当然の流れだったと言える。

  「かつてのアメリカは、一生懸命働けば、いつかは夢がかなう。そんな希望があったが、今は微塵もない。」 デモの参加者がそう語っていたことが印象深い。この輝かしい国も数十年で全く違う国になってしまったようだ。

  私は、この問題の根本的原因のひとつに「自由のはき違い」があると考える。アメリカは自由の象徴的国であるが、一部のエリートたちがその自由を自分の都合の良いように使い、民主主義を破滅に追い込んだ。おそらく、アメリカ中の大半の人達がそう実感したことだろう。

  しかし、現実を変えることは難しい。現在のアメリカは、まだウォール街中心に回っており、また回り続ける構造になっているからだ。これから先、いかに経済を立て直すことができるのか。今までのようにドル基軸のシステムがいつまで続くかわからない。世界の工場は中国をはじめとするアジアに完全に移っている。オバマ大統領はアメリカを輸出大国にすると宣言したが容易いことではない。

  いまは静かなデモ行進をしているが、いつまで冷静な抗議デモでいられるか。中東の民主化運動、ギリシャなどの欧州経済危機による暴動ばかり報道されているが、アメリカ自身も他人事ではない。民主主義のグラつき、そして経済危機、中身はさほど変らない。これをどう乗り切るか、オバマ大統領の今後の手腕次第で、世界は大きく変りそうである。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント