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日本の美は、奥行の美学だ。 [文化・歴史・芸術]

  日本の商品はデザインがいまいち。これが専らの評であった。 ヨーロッパやアメリカ、家電製品では韓国も洗練されたデザインである。それに比べて日本製品はどうも野暮ったく見える。日本はデザイン後進国なのか。

  最近、ビールやお菓子をはじめ、昭和レトロの復興版が人気を集めている。あのころは、ダサいと感じたものが、いま見ると実に新鮮で、人間味溢れるデザインに思えることも多々ある。建物についても最近のものより、大正や昭和初期に建てられた建築物の方が、日本独特で逆に味わい深いものがある。

  デザインや美についての定かな基準や定義はない。でも、人は美に対する何かの基準を持っている。それは、人の価値観によるところが大きいと思うが、それで良し悪しを決めてしまうケースが多い。

  我々の感性は、いつも揺れており、また、どこかで洗脳され続けている。テレビで流れるコマーシャル、雑誌などでこれは良いデザインで、これは悪いデザインなど、知らず知らずの間に、外側からその美学を押し付けられている。結局、その時に認知した流行や世の中の雰囲気が判断基準になり、固定観念で見定めてしまっていることも多い。だから、時間が経って、改めて見直すとその良さに気づき、「これはダサいのではなく、そのものの個性だ」とわかる。

  一方、日本の美はわかりにくいのも事実だ。究極の美はやはり風流とよばれる茶碗や庭園など、自然の素材を最大限活かし、そこから美を追求したものだ。国宝級の茶碗など、受け手が、それなりの感性を持っていなければ、ただの出来損ないの焼き物にしか見ない。しかし、その茶碗は、作り手の神かがった美意識と熟練した技術で成しえた最高傑作なのだ。美を飾らずに、美を見せる手法、それが「和の美学」の真髄とも言える。世界どこを見回しても日本唯一の誇り高き文化である。

  日本は、そうした飾らない美が生活全般に溶け込んでおり、身の回りの多くのものに自然美が浸透している。西欧諸国のような明確な形状、色彩、飾りで美をつくる思想とは正反対で、むしろデザインの良さが見えにくい。 日本のデザインが「いまいち」という概念は、そうした文化の差、そして西欧諸国のデザイン感覚に洗脳された結果かもしれない。むしろ、日本のデザインの方が潜在的美しさがあり、奥行きのある美学なのかもしれない。そういう意味では、もっとデザイン文化に自信を持っていいのではないか。


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