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いま「工場見学」がホット。日本のものづくり現場は凄い。 [産業・企業]

 最近、商品が原材料から完成品するまでの製造工程を紹介する「工場見学」をテーマにしたテレビ番組をよく観る。人気バラエティ番組でもよく取り上げられ、クイズを交えながら家族で楽しめる内容のものが多い。ひと昔前、工場見学といえば小学校の社会科授業の一環で、退屈でつまらないイメージが強く、しかも汚くて、暗く、過酷な作業環境のところが多かった。

 ところがいまは違う。人気のある工場は観光ルートに組み込まれるほどで、試飲や試食、そして、お土産なども充実して、大人から子供まで色々楽しめるそうだ。最近ではこの工場見学のガイドブックが発売され、初版が品切れになるほどの売れ行きらしい。いまや地味な「ものづく現場」が人を引き寄せる、まさにショールームに変身している。

  先日もテレビでヤマザキパンのパン作り現場を紹介する番組があった。我々の馴染みある食パンや菓子パンが、こんな風に出来上がっていくのかと、本当に感心させられるシーンの連続で、まるで商品が生きているかのような錯覚をしてしまうぐらいであった。もちろん番組では、興味を持たせる為、カメラアングルやナレーションでよりオモシロ、オカシク表現しているが、それだけでない。これを支える製造技術の独創性や凄さにも感動させられる。

  生産ラインは、基本的にベルトコンベア方式で、狭いスペースの中、クネクネと回る造りになっている。その製造ラインは遊園地のアトラクションのように色々な仕掛けがあり、原料の小麦粉から、そのひとつひとつの工程を経ながら、りっぱなパンに仕上がっていく。その光景は、子供が成長するさまに似ており、そのせいか、パンにもちょっと愛(いと)おしさを感じてしまう。

 番組では様々な工程をいろいろなシーンに重ね合わせ面白く解説している。たとえば、パンに回転チューブでイチゴクリームを均し塗りする工程を「トリプルアクセル」、あんぱんにヒレヒレでつや出しをする工程を「シンクロナイトスイミング」など、まるでパンのスポーツ大会のように語られ、観る者を楽しい気分にさせてくれる。そんなユニークな製造工程に、日本の技術がキラリと光ってるのも見どころだ。

  日本の生産技術の強さはトヨタのかんばん方式をはじめ、重工業や電機電子業界に注目されるが、むしろ、これらの食品製造工場の方が日本らしく、世界中どの国でも真似が出来ない技術に思える。先進国であるヨーロッパやアメリカの先進国でさえ、こんな器用な製造ラインを発想し、実現できるとは考えられない。韓国、中国も技術で日本を追い越したと言われているが、こうしたきめ細やかな技術力はまだまだ日本の方が上であると思う。

 この製造技術は、機械メーカーのエンジニアだけでなく、食品工場のスタッフや職人などのコラボレーションで成しうるワザである。このような技術の結集はまさに日本のお家芸だ。

  このヤマザキパンでは多種多様の商品を、1日何万個も作っているという。こうした製造を可能にしているのは日本人のものづくりにおける技術のこだわりである。これは能力と言うよりも、文化と習慣の力でもある。だから、簡単には真似ができるものではない。

  だが、多種多様な商品を製造する能力は、時には採算性の低下を招き、経営的には必ずしもいい結果をもたらすとは限らない。新興国のように単品大量生産の方が効率的で、それに比べ、日本は多くの無駄を費やしているのかもしれない。しかしながら、日本の消費者はわがままだ。そして日本人は、昔からそれに応えようと努力する精神が染みつき、勤勉に働く。だから、信じられないような特異な商品も平気で作ってしまうのだ。これも文化の力と言えよう。

  いま中国やインドは経済成長期で、多くの消費者は量を求める傾向にある。だが、いずれ量から質に転じる時期が来るだろう。その時、日本の多種多様化を実現できる技術が本領発揮する時代になる。いま日本の技術はガラパゴスと茶化されているが、それに卑下することはない。日本は自分の生き方をしっかり持ち、それを武器に突き進むべきである。そんな特殊な国が世界にひとつぐらいあってもいいのではないか。


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