日本を代表する企業であるソニー、パナソニック、シャープが振るわない。業績は大赤字。人員削減に、工場は売却、かつての輝きはない。それに対してアップルやサムスンは大増益。天と地の差が開いた。

  新聞では、急激な円高、薄型テレビの過当競争、東日本大震災やタイ洪水の被害などを原因にあげている。たしかに、それらの外的要因によるダメージは大きいが、本当にそれだけなのか。実際に家電量販店に行くと、「いままでになかった現実」を見せつけられる。

   例えば、最先端商品であるタブレットPC、本来ならば小型化や高性能化を得意とする日本のお家芸商品である。しかし、売場を見渡せばアップルのiPadの圧勝だ。どこの家電店に行っても、アップル製品が店の一番目立つところで主役を張り、人を惹きつけている。一方、ソニータブレットや東芝のREGZEタブレットのなどの日本勢はといえば、店の隅の方で人も閑散とした中、とても寂しく売られている。

   でもなぜ、こんなに人気が薄いのか。かつての日本家電製品の威光はいったいどこに行ったのか。ただ、最近の日本企業を見ていると、いくつか思うところもある。  

     そのひとつには、「自社のブランドの絶対的な過信」。いままでは、どんな優秀な外国商品でも、日本の消費者は日本製品の方が絶対品質的に優れていると信じ、買い続けていた。また、裏切ることも殆どなかった。ところが、最近、その流れは違う展開になってきた。特に若い世代は、機能はそこそこ、安くて、デザイン性が良いものであればブランドにこだわらない傾向が強く、インターネットで物品を購入する層はさらにその傾向が顕著になっている。そんな中、社名やブランドにあぐらをかいていては、どんなに優良企業でも退場を余儀なくされる厳しい時代だ。

   もうひとつは、大企業特有の活力の無さ。いま、日本の中で元気がある会社社長といえばユニクロの柳井さん、ソフトバンクの孫さんがいる。いずれも創業者で桁外れの夢を語り、驚く行動力の持ち主だ。それに比べて、ソニーやパナソニックの社長は、エリートで、スマートな印象が強い。数兆円の売上げを率いる大社長であるから当然かもしれないが、創業時のギラギラしているベンチャー精神は見えてこない。会社自体も、大企業特有の優秀さだけが目立ち、面白味や魅力が薄れて、それが商品にも表れているような気がする。バブル以降もずっと日本をけん引してきたこれらの看板企業、ここが元気をなくしたら、そのダメージは果てしなく大きい。

   今回のアップル、サムスンとの勝敗は、決算上、超円高などの外的要因で説明できるが、本当のところは「チャレンジする力」の差であろう。長い間、経済大国で平和な時代が続いたことで、日本人の「ハングリーさ」や「ひた向きな真面目さ、危機感」が、すっかり失せてしまった。その緩みこそ、日本企業の元気、気迫の無さの本質的問題であり、もう一度、それらを取り戻さない限り、本当の危機が訪れるのではないだろうか。ソニー、パナソニックの業績不振はそんな予兆を示しているような気がしてならない。