デビット・モントゴメリー+アン・ビクレー著の「土と内臓:微生物がつくる世界」という本を読んだ。タイトルだけ見ると「ギョ!」とするが、地球上のありとあらゆる生命は、実は目に見えない微生物たちの営みによって支えられているという、微生物がつくる神秘で不思議な世界を描いている。
 
私たちは微生物や細菌を「ババッチい病原体」として見なしており、一般的には殺菌や洗浄などで菌が存在しない世界を望む傾向にある。ただ、菌の中でも食中毒を起こすものや赤痢やコレラなど明らかに病原体として除去しなければならないものもある。しかし、多くの微生物はすべてそうした邪悪なものではなく、むしろ一緒に共生して助けを借りなければ、我々の生命システムを維持できないということも、近年の研究で少しづつ分かってきた。微生物も人間社会と同じで、良い奴もいれば悪い奴もいる。すべてワルの世界ではないという認識をもっと知る必要があるようだ。
 
しかしながら、今回の新型ウイルスの発生は、手洗い、消毒、マスク、さらに人との接触もNGという、これまでにない異常といえるほどの滅菌社会をつくってしまった。コロナ怖さが、ここまで追い込んだのかもしれないが、果たしてどうなのか。
 
近年の予防医学は、病原体となるものを除外することからはじまる。基本的に細菌やウイルスはすべて外敵で、その存在を極力許さない。そうすることによって、感染を阻止し、病気が広がらないようにする。非常に論理的で説得性がある。
それに対して、免疫を中心とした医学はわかりにくい。人間の潜在的にある防御システム、それは体の中で共生する微生物たちとの連係プレーで成り立っている。大腸の中に棲み着く腸内細菌(マイクロバイオーム)は驚くほど、人の健康維持に貢献している。それが分かってきたのも最近の研究、まだまだ発展途上の分野らしい。
 
植物も同様に土壌の中の微生物が栄養素となる物質を分解、生成し、その成分を根っこから吸収させる手助けをしている。また、植物の免疫力にも大きく関わっており、人間の大腸と非常に類似した役割をしている。
微生物を豊富に含んだ土壌づくり(堆肥など)が、植物の生育にとって最も大切と言われるのはそういうことからだろう。
 
こうした共存関係で地球上のあらゆる生命は成り立っており、この共生関係をいかにうまく営むかが、人類が最適に生きていく上での重要なカギを握っているように思える。
現在の環境破壊や薬漬けの医療などは、この共存関係を崩壊させるもので、これから数十年後にどのような弊害が起きるか、とても危惧するところだ。いま、4回目のコロナワクチン接種が始まっているが、人工的に作られたmRNAを体内に注入し、人の免疫システムをコントロールしようとする技術は、本当に自然の摂理に適応できるのか。我々の体は単に自分の細胞だけではなく、微生物やウイルスと共存した自然環境の微妙なバランスで出来ており、そこへ人工的な強制介入を行うのだ。そう考えると強引な行為で、本当に大丈夫か、少々不安を感じてしまう。
 
さて、この本を読み終えて思ったことは、毎日食べる食事は自分自身が摂取するのではなく、実は腸内細菌に食べさせて、その糞(分解したもの)を我々は栄養素として、あるいは彼らが生成した酵素などを吸収して、生きているのではないかと。大げさな言い方だが、微生物のおかげで生きさせてもらっているのかもしれない。
 
まあ、人間社会も1人では生きていけない。やはり多くの人との共存関係で成り立っており、その一人ひとりが生き生きすることで全体が良くなってくる。人の健康は、微生物の健康に気を使ってやることが大切で、それには暴飲暴食、ストレスなど禁物。
 
結局、ここに行きつくのかもしれない。